東京高等裁判所 昭和48年(ネ)1516号 判決
控訴人は、被控訴人は被害者に対し、被害者の請求がないにもかかわらず、前記慰藉料及び後遺障害による損害を支払ったのは不当であると主張するが、自賠法施行規則第二七条が、政府に対し損害の填補を請求する場合には請求する金額及びその算出基礎等をも記載した書面をもってし、且つこれらを証するに足る書面を添付しなければならないとしているのは、政府に対する補償請求権はその前提要件として、加害者に対する損害賠償請求権の存在が予定されるので、右賠償義務者に対抗するためと、他面被害者に対する支払を促進し、その早期救済を図るため政府の書面審査を容易にする必要上の要請から、請求者に対し事故の原因責任の所在・損害の積算等を一応添付資料により明らかにすべきものとしたのである。その法意が右の如きものである以上請求を受けた政府は請求書記載の限度に拘束されるものではなく、たとえそれに記載のない慰藉料についても、添付資料に基いて被害者の被った精神的損害及びその額が認定しうる以上法令に定められた限度内においてこれが補償をなすことを妨げられないものと解するを相当とする。(補償金の支払いにつき賠償義務者が全く関与していないとしても、政府が行う代位請求においてこれを争う余地は残されているのであるからこのように解しても必ずしも賠償義務者の不利益とはならない)。
(杉山 古川 岩佐)